レシピをたくさん投稿してくださっている方々を中心に、スタッフがレシピ作者さんにお話を伺うインタビュー企画、第7弾!(前回の記事はこちら)。今回は500品以上(2019年8月現在)公開されているremiesさんにお話を聞いてまいりました。remiesさんは心理・社会教育を軸に小学生から留学生を含めた大学院生まで学生達と関わるお仕事をされています。様々な国の幅広い年代の学生さんと会われるremiesさんだからこそ、思い出の詰まった料理をレシピとして形にすることへの思い入れが強く、とても印象的でした。
きっかけは海外への学生への情報発信
ーーレシピを投稿するようになったきっかけを教えてください。
約10年前にクックパッドを始めた当時は大学の留学センターで働いていました。大学を卒業して海外に戻った留学生と大学をつないで、海外に出た学生に情報を発信するためのコミュニティを作っていたのです。その時の上司が雑誌でクックパッドが紹介されていることを教えてくれました。「情報発信やコミュニティ形成の参考になるかもしれないから登録してみてよ」と提案してくれたんです。
実際翌年にニュースレターを配信することになって、季節の日本の料理のレシピをいくつか日本語版と英訳版でそれぞれ公開しました。
お月見団子はその頃に投稿されたレシピの一つ。
そのあとはしばらく更新が止まっていたのですが、自分のレシピ帳を見返すよりは便利ですし、娘のためにレシピを残すのにも使えるのではと思い、またレシピを投稿するようになりました。
フライパンでさばの味噌煮など、お母様から受け継いだレシピも多数アップされています。
今私は大学で学生のレポートを見る仕事をしたり、引きこもっていた若者達が社会に出てきた際に心の教育(レジリエンス教育)をしたり、小学生に心の教育をしたり、勉強を教えていて、子どもから高齢者まで幅広い世代との関わりがあります。
特に大学生や生きづらさを抱える若者が、いざ一人暮らしを始めて料理をしたときに、お腹を壊したり、元気がなくてまともな食事もとれず、心も弱くなるのを見て、専門の心の教育以前に、まずは「食べるものが体を作る、心を強くすることにつながっている」と伝えたいと思うようになりました。彼らに簡単な料理を教えたり、彼らの得意料理を教えてもらい作ったものをレシピとして公開して、「アップしたから見てね」といったやり取りをしています。
私がクックパッドにレシピを公開したと言うと男の子達も興味を持ってくれて、そこから食べ物や料理にも興味を持つようになってくれるんですよ。このコミュニケーションが大学生や生きづらさを抱える若者達の生きる力につながればいいなと思っています。
レシピ動画がスーパーの店頭で流れたことも
投稿頻度が増えたきっかけは、母がよく作ってくれた長ネギのぬたのレシピに多くのアクセスがあったことですね。頑張ろうと思ってたくさんレシピをアップするようになりました。つくれぽ*1をいただいて誰かが「美味しい」「役に立った」と言ってくださるのはとても嬉しいです。
最近だと、スーパーのcookpad storeTV*2で私のレシピが動画で紹介されたこともモチベーションアップになりました。実際に店頭で自分のレシピが動画で流れるのを家族と見て感動しましたね。
動画になったお蕎麦のレシピは夏にぴったりです。
それ以外にも、クックパッドのスタッフの方からメールをいただいた際に、ただ自分の記録を載せているのではなく「つながっているな」と感じます。レシピを見た方が安全に料理できるように「載せ方をこのように変えていただけますか?」という具合にスタッフの方がメールで丁寧にアドバイスしてくださることがあるんです。つくれぽを送ってくださる方とも、運営している会社の方ともつながっている感があるサービスだなと思いますね。
再現レシピのルーツは、学生時代の国際交流
切り干し大根のタブリサラダは、UAE在住のレバノンの友人から教えてもらったタブリを和風アレンジしたもの。
ーー元々料理はお好きだったんですか?
そうですね。うちの母親は田舎の素朴な料理を作ることが多かったのですが、私の実家は近くに米軍基地があったので、幼いころから外国人の家族とお付き合いもあり、外国の料理にも憧れるようになりました。外国の方に限らず、友人のお宅でご飯をいただいたときにも、それぞれの家庭で料理や味の違いが面白いなと刺激を受けるようになって、中学生の頃から自分でも料理をするようになりました。
大学生になってからは、いくつか料理教室にも通いましたし、外食もするようになって、だんだんとお店の料理を再現して作るのも好きになっていきました。
私はUAEに住んでいたことがあったり、海外を訪れる機会が多かったのですが、その際も必ず料理の写真を撮ってメモしていました。そのうちにレストランに行く度に「この料理には何が入っているんだろうね」と気づけば口に出るようになりました(笑)
私が食に関心が強いからなのか、娘も卒業論文でハワイに渡った日系移民の食文化をテーマに研究しました。そのフィールドワークの際に私も現地に同行させてもらって、様々な国の移民がハワイに持ち込んだ料理を、娘と一緒に食べ歩きました。それから、日系移民のおばあちゃま達に会って食べ物を作ってもらいました。そのときも写真を撮って入っている食材を全部聞いたりしていましたね。
ハワイで味わったロミロミサーモンもレシピになっています。
レシピは時間も国も超えて幸せな時間を思い出すことが出来る宝物
三杯鶏(サンベイジー)は台湾のご友人に教わった家庭料理を作りやすくアレンジされたレシピとのこと。
ーーremiesさんにとって、クックパッドはどんな存在ですか?
「幸せな時間の記憶」なのかな。私、亡くなった大切な友人や、友人のお母さんが教えてくれた料理を再現してレシピにしたりもしているんですよ。だからその料理を作ると、あたたかい思い出に浸ることができるんです。私にとってクックパッドは思い出の記憶につながるツールでもあるんです。
海外で教えてもらったレシピも、作る度に当時のことを思い出すんですよね。味と共に記憶を掘り起こせる幸せみたいなものをものすごく感じます。私自身のレシピも、この先私がこの世を去った後、娘が作ってほっこり私を思い出してくれたらいいなと思いますね。娘もだんだん食に興味を持ってきて、家族に食事を作ってくれたり、自分が食べに行って美味しかったものを再現してくれます。また、娘は昨年アスリートフードマイスターの資格を取ったので、けがをした家族にもいろいろ食のアドバイスをしてくれて助かりました。私も今度取ろうと思っています。最近は食に関して、娘とお互い触発し合っている関係です。
このチャプチェのレシピも韓国からの留学生から教わった本場の味です。
留学生たちも、「あなたの国ではどんなものを食べるの?お母さんの得意料理は何?」と聞くとみんな誇らしい顔で教えてくれるんですよ。男の子も女の子も、本当にお母さんのことが大好きなんだなと伝わるくらい熱心に教えてくれます。彼らが故郷に帰ってしまうともうほとんど一生会えないのですが、教えてもらった料理を「作ってみたよ、美味しかったよ」と連絡すると、そこでまたコミュニケーションを取れるのが嬉しいですね。そしてそのレシピを見て作って食べることで、彼らの国に思いを馳せたり、当時のことを懐かしく思い出したりしています。
料理って心身ともに健康でないとなかなかできないですよね。だから、料理を作れることは幸せです。もう会えない人も含めて、料理で記憶とつながれる幸せを日々強く感じています。
このチキン コルドン ブルーも、毎年お誕生日にお母さんが作ってくれた大好きな料理、とシアトルの留学生から教わった料理です。
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(編集後記)
ご家族、世界中のご友人、留学生、美味しいレストラン。お一人のレシピ作者さんのレシピページの中に、これまでの人生で出会った世界中のたくさんの美味しい料理を作る方達の知恵と思い出が詰まっていると知って、とても浪漫を感じました。
remiesさんのキッチンでは、お母様から受け継いだ日本の料理から世界各国の方から教わった料理まで、思い出の詰まった多彩なレシピに出会うことが出来ます。ぜひチェックしてみてください!